「母の物語」
ひとことで言えばそういうことになるでしょうか。
人間のこどものようにみえて、何かの拍子におおかみに変身してしまう子どもたち。
そんなファンタジックな設定に心温まるおとぎ話を期待してしまいますが、実際はそんなことありませんでした。
「好きになったおおかみおとことの間に、おおかみこどもが生まれた」というところ以外ファンタジー的な要素はなく、恋をして、好きな人との子どもを宿して出産し、子の成長を喜んだり戸惑ったりしながら必死に子育てをする母親の姿が淡々と描かれています。
甘えん坊の男の子と、おてんばな女の子。
両極端な性格の2人の子どもが、多くの母親の共感を得るのは間違いありません。
小さいころは人一倍愛情を必要とする男の子。
自分が守ってあげなければ、という思いで愛情いっぱい注いできたけれど、
ある日突然、母親を必要としなくなる日がやってきます。
一方でおてんばな女の子は、成長していくうちに「他の女の子は自分みたいに木登りや虫取り遊びなんかしない」と気づきます。
周囲と協調することを優先するようになり、時に「自分らしさ」を置き忘れてきたことを嘆きます。
大人になる過程で、振り返ることなく前進するようになる男の子と、時に後ろを振り返りながら人生の厚みを増して行く女の子の対比が面白いです。
一方で、成長した子どもたちを家から送り出したところで物語は幕を閉じますが、母親にとってはここが正念場というか、新しいやりがいを見つけなければならない時期になります。
子どもたちを「共感」によって育ててきた母親はそうでもないと思いますが、「この子の成長は私だけの責任であり、自分が必死にがんばったかどうかが子どもの人生を決める」というような、ちょっと一方的で偏った思いで育ててきた母親には危険な時期だと思います。
劇中に時々流れるナレーションは子ども(雪)の視点。
映像的な視点は主人公である母親のものを中心に描かれています。
同じストーリーを子どもと母親という2人の視点で語ることは、多くの人に「共感」される大きなポイントだと思います。
とはいうものの、この作品は小説的なストーリー展開で「行間を読む」ような感受性が必要です。
アニメ的なデフォルメも、映画的な演出で娯楽度を高めたりといった仕掛けも少ないです。
そういう意味では対象年齢は高く、子どもたちにとっては「ちょっと難しくて分からない」映画になっていると思います。
同監督の「時をかける少女」「サマーウォーズ」のほか「八日目の蝉」などで脚本を担当した奥寺佐渡子氏に加え、今回は自ら脚本も担当された細田監督。
前作の完成前に母を亡くし、母は幸せだったのか?を考えぬいた細田監督と、母でもあり脚本家の奥寺氏のコンビネーションが、この映画の世界観を奥深いものにしているようです。
うちは長男がまだ4歳ですが、10年後、20年後にまた見返して、自分たちの子育てを振り返りたいと思うような映画でした。


サマーウォーズ~花札KOIKOI~ 1.0.9(¥450)
カテゴリ: ゲーム, エンターテインメント, カード, ボード
販売元: Index Corporation – Index Corporation(サイズ: 59.1 MB)
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